2012年12月5日水曜日

シェーンベルク「浄夜」


シェーンベルク/浄夜/ブーレーズ&ドメーヌミュージカルアンサンブル(1975)



結局のところ、この人は「調性音楽をぶっ壊した」人として歴史に名を残すのでしょう。
しかし「浄夜」は無調性ではありません。そしてリヒャルトデーメルという詩人の詩を題材にした標題音楽です。
シェーンベルクは20世紀の人ですが、この曲はギリギリ19世紀の作品です。
これを聴けば彼が無調性音楽でいたずらにデタラメをやっていたのではないことがわかります。
題材となった詩も素晴らしい。訳詞によってかなり内容の解釈に差は出るのですが、僕の一番好きな訳はとても直訳的なこのレコードのライナーノーツの訳です。他のサイトからコピペすれば良かったのでしょうけれど、変に文学的な意訳よりも、直訳の方がこの詩の本質をよく表しているので、頑張って書きます。



浄夜 (リヒャルト・デーメル)

枯れて冷たい林の間二人が歩いている
月が二人を照らし、彼らはそれを見上げる
高い樫の木の黒い先端が空にそびえ、その上に月が走る
空の輝きを曇らす雲は一つもない
女の声が話す


私は身ごもっていますが、あなたの子供ではない
私は罪を感じてあなたと歩いています
私は私自身をひどく辱めてしまった
私は幸福な未来が信じられなかったが
充実した生命と母としての幸福と義務に
強い憧れを感じていました
そして私はわななきながら、見知らぬ男に身を任せ
それを祝福さえしてしまった
今や生命が私にしかえしをして
今私はあなたに出会ったのです

女はおぼつかない足取りで歩み、空を見上げる
月とともに歩み
彼女の暗い眼差しは光のなかに溶ける

男の声が話す
あなたの身ごもっている子供は
あなたの魂の重荷ではない
世界がどんなに明るく輝いているか、ごらんなさい
すべてのまわりに輝きがある
私たちは冷たい海の上をただよっているが
私からあなたに、そしてあなたから私に
暖かさが直接伝わってくる
それは他人の子供を清め
あなたはその子供を私のために生むでしょう
あなたは私に輝きをもたらした
あなたは私を子ども自身にしてしまった

彼は女の腰をつよくだきしめ
彼らの呼吸は風のなかで口付けを交わす
二人は清められた明るい夜に歩いてゆく




ズービン・メータ&VPOの浄夜
http://youtu.be/B-ii8JMPUxc